部活動の活発さをウリの一つとしているこの学院では、部活動の活動日は原則として最低でも平日の五日間。

大抵の部活は土日も含めて毎日みっちり活動している。



しかし、彼女はとある事情により、部活に打ち込んでいる暇がない。


時間というものは残酷なもので、あと一週間もすれば体験入部期間は終わってしまう。

それまでに、どこかに本入部をしなくてはならないのだった。


体験期間が終わるまでの、あと、たったの一週間で。


自分でも入ることのできる部活を探し出さなくてはならないのだ。

しかし彼女は、差し出されるビラには目もくれずに下駄箱まで突っ切った。

そのまま下駄箱に靴を荒々しく突っ込み上履きをひっかけると、ようやく安堵のため息をつく。


少し早めの時間に来ているせいか、下駄箱に一年生の姿はまばらだ。


(毎日毎日校門からぎっしり勧誘の列……いい加減にしてほしい……)


時間帯によっては混雑して迷惑となるため、下駄箱での勧誘活動は禁止されていた。

つまりここにいる間は、勧誘目的の上級生が来ることはなく、それを無視する必要もない。


(かといって何にも入らないわけもいかないし……楽そうな部活は勧誘活動すらしてない……申請してある部活しか部活一覧には載ってないから見つけようもないし……ああもう!)


「おはようございまーす」


一人で悶々として立ち尽くしている不審な女子生徒に話しかけてきたのは男子生徒。

とりたてて見た目に特徴はなく、まさに普通、といった感じ。

身長は、平均よりやや高いくらいだろうか。

制服に崩した様子もなく、少し長めの茶色がかった髪があちこちにつんつんと跳ねていた。

嫌みのない朗らかな笑みを浮かべていて、学校のパンフレットにでもちゃっかり写真が載っていそうな雰囲気を纏っている。