脱いでいたブレザーを羽織ると、毛布を丁寧に畳んでソファーの上に置く。

そして窓際に歩いていくと、鍵のチェックをして、カーテンを閉めた。

そのほかにもあちこちチェックしているようだ。

杜撰なようで、こういう所は意外ときっちりしているらしい。


「おっし。んじゃー出ろ出ろー鍵閉めるぞー」


ほれほれ、と促されるままに部室を出た。

こうして近くに来られると、やはりでかい。


「ジン先輩、背高いですね。いいなぁ……何センチあるんですか?」


「寝る子は育つんだよー。180くらいかな? ねぎ子も別に小柄じゃーないと思うよ。奈津は小さすぎだけどね」


部室のドアノブの鍵穴に鍵を差してがちゃがちゃと回す先輩と、隣に立つ奈津さん。

こうやって二人セットで見るとやはり身長差が際立つ……そして美青年&美少女。

私、この二人と一緒にいて良いんだろうか……周りの人の視覚に良くない気がした。なんだか申し訳ない。


「んじゃ俺出席簿職員室にぶん投げてから帰るわー。じゃあのー」


鞄を適当に肩にひっかけてというかぶら下げてというか、ある種納得のいい加減さで帰り支度を済ませると、ふらりと歩きだして行ってしまった。


「あ、えっと……お願いします。さようならー」


そういえば副部長だとか言ってたっけ……

部室のドアポストは、顧問が出席簿を入れておくものなのかもしれない。


ジン先輩が一人で先にさっさと行ってしまったので、奈津さんと二人で取り残されてしまった。

いくら仲の良い兄妹といえど、さすがに高校生にもなって一緒に帰ったりはしないようだ。


「えっと、奈津さん」


無言ではあるが、こちらを見てくれた。

無愛想に見えるが、もともと口数の少ない子というだけで、誰かをないがしろにするような子ではないと思う。


「これから一年……同じクラス、だよね。よろしくね」


「……うん。わたしも、よろしく」