『だから応援しようって決めたんだ。弘人先生なら負けても仕方ねぇなって。』


夜風に当たって少し冷えてきたのか、伊吹くんは制服のポケットに手を入れる。

もう見て見ぬ振りはできない。

伊吹くんの気持ちを、ちゃんと聞いて自分の中で認めなければいけない。



『でも明らかに元気ない有佐見てるとさ…俺が身引く理由なんてもうないんじゃないかって思うよ。』


俯いていた顔を上げた伊吹くんと、真正面から目が合う。

それは1秒くらいだったのかもしれないし、10秒くらい見つめ合っていたのかもしれない。


時間が止まったような感覚の中で、気付けば伊吹くんの腕の中にいた。


半袖のシャツから伸びた、細いようでちゃんと筋肉のついた腕。

優しく優しく、そっと身体を温めるような力。



『俺、有佐のことが好きだ。』


初めてハッキリと言葉にして伝えられた想い。

きっと私の中に弘人さんしかいないことを分かっていて、それでも伝えてくれた想い。