『なにー?また来たのー?』
和哉の部屋のインターフォンを鳴らすと、呑気な声に出迎えられる。
『あ、れ…?夏波も一緒?』
その声が俺の後ろの有佐を見て驚きに変わる。
有佐とは、マンションの前で待ち合わせて一緒に来た。
『さっき下で会ったの。』
まぁ嘘ではないよね?というような有佐の視線に視線で頷き返し、和哉の部屋へ上がる。
『あんまり夜外出すると母さんが心配すんだろ?』
『お兄ちゃんのとこだったら大丈夫だよ。遅くなれば泊まれば良いんだし。』
『それで今朝だって遅刻しそうになってたくせに。』
和哉はそう笑いながら有佐の髪をくしゃくしゃと撫でる。
ひとりっ子の俺にはこれが妹に対する一般的な兄の姿なのかどうか分からないけれど、可愛くて仕方がないという気持ちを恥ずかし気もなく表現する和哉にちゃんと話せるだろうかと不安になる。
ボッコボコに殴られたりしないだろうか…
まぁ負けないけど。