「違うんだ、伊吹。」
『何がですか?有佐は好きな人って言ったけど、もう付き合ってるんですよね?』
「あぁ、付き合ってる。抜け駆けって言われても仕方ない。でも俺は…」
ただ、元カノが忘れられなくて…サッカーを辞めたことから全然立ち直れてなくて…
「俺は…有佐を不安にさせてばかりで、全然頼りになんかならないし、安心させてやれるようなことも何も言えない。」
そんな俺を救いたいと言ってくれた有佐にすがり付いているだけの、弱くて情けなくてずるい奴だ。
「伊吹から俺がどう見えてるのか分からないけど、俺はそんな大した奴じゃない。
自分で自分の過去も乗り越えられなくて有佐に寄りかかることしかできない。」
『なんすかそれ。ギャップ萌え、的なやつですか。』
今日初めての笑顔を見せながら伊吹が言う。
「有佐はそんな俺でも好きだと言ってくれた。俺はその言葉に甘えてる。」
言い訳も弁解も通用しないなら、素直な想いを話すしかない。