樹の横にちょこんと座ると、目の前に彼のケータイが置かれてあった。
「彼氏のケータイとか見ない派?」
樹の向こう側に座った中村が訊いてくる。
「見ないよ」
「朝の電話、誰からだったかホントは気になってるんだろ?」
「あれは祐二さんっていう友達だもん」
口をとがらせて言うと、中村はニヤッと笑った。
「ふーん、案外簡単にだまされちゃうんだ?」
ムカついて顔を上げたら、その横に座っている大淀と目が合った。
「じゃあさ、上野……。もしも彼氏がウソをついてたら、大淀に乗り換えちゃいなよ」
何でもないことのように、さらっと中村が言う。
「もしも別のオンナと電話してんのに隠してたら、そんな誠意のない男だったら……。
俺、マジでオススメだけどね、大淀」
たぶん本気の顔を、中村はしていた。
「こいつ、不器用だけど…いいやつなんだ」
それはわかっている。