「学校へ行く途中、迷子になったみたいに1人で泣きながら立ち尽くしてた。だから俺、上野の手を引いて学校へ行ったんだ。
あれ、あんたのせいだろ?」
大淀が樹に言葉をぶつける。
「あー…うん。たぶん」
あっさり認めて、樹は気まずそうに鼻の頭をポリッとやった。
そんな樹にサホリンが小声でささやく。
「樹クンが電話で間違って、他の女の名前を呼んだじゃん? その翌朝のことだよ」
「その朝の電話も結局時間切れで、ほら、ケンカみたいなまま終わっちゃったんでしょ?」
ミャンマーも諭すみたいにそう続けた。
「ああ、あの日か」
素直に納得する樹。
大淀がその様子を見て、ハァーとため息をついた。
「こっちまで悲しくなる」
ひとり言みたいにつぶやいている。