「……別に」
浮かびかけた笑顔をあわてて消したけれど、
ほめられてうれしそうな大淀を見るのは、これが初めてだったな。うん。
それから1時間半、樹は仮眠をとった。
彼曰く、90分が睡眠の1サイクルらしい。
「ホントはこのままでも走れるんだけど、途中で眠たくなったら危ないからな。少しだけでも寝ておくと全然ちがうんだ」
そう言って、床にゴロンと横になった樹に、大淀がムスッとベッドを勧めていた。
ベッドにもぐり込んだ顔をのぞきに行くと、樹は本当に、ものの3分くらいで眠ってしまった。
……疲れてるんだよね。
さっき電話で彼が『ちょっと眠ってから行く』って言ったのは、ホントのことだったのかもしれない。
わたしは勝手に、美里さんに会いに行くんだと決めつけてしまったけれど……。