「ダメ……ッ」
「貸せ…って」


両手で抱え込むようにして、大淀には渡さない。


だって大淀、断っちゃうもん……!




「上野、お前ナメられてんだぞ、わかってんの?」


「……いい」


「そんな男やめとけよ。俺たちだけで行こう。な?」


最後の方はいつになく、諭すような優しい声で。




だけど……


「樹と、海……っ」


ダバダバッと、涙があふれ出した。




それを見て一瞬ひるんだ大淀が、言葉をつなぐ。


「行きたいのかよ…?」


声にならなくて、わたしはブンブンと何度も大きくうなずいた。




樹と海、行きたいもん……!