くよくよなんて、していられない。

一生ぶん泣いた。だから、あとは笑う道を進むしかない。

もう、泣く道は俺にはない。

「雪夢」

「うわわっ」

再び病院。

雪夢の部屋へと入っていくと雪夢は深い緑の手帳を広げて眺めていた。

「え、と冬威くん…と、華月さん」

「また来ちゃってごめんね。迷惑じゃない?」

華月が眉を寄せて心配そうに雪夢に訊ねると雪夢は髪を振り乱して顔を横に振った。

「ぜっ、全然っ…私なんかを訪ねてくれただけで…」

といって笑った。俺が見たことない、愛想だけの、嬉しそうな笑顔。その笑顔には信頼とか安心とか気楽っていう感情はうかがえない。でも、こころのそこから嬉しそうなのはわかった。