華月は非常に困り果てていた。

目の前に、涙をぼろぼた流しながら、あらゆる料理にてをつけて、いわゆる「やけ食い」をしている男がいるからだ。

「………いくら食べ放題だからって…」

スパゲッティ三皿、焼き肉二人前、サラダ山盛り、ハンバーグやエビフライなどの単品の料理をやく四皿……あとはデザートにケーキを軽く六個。

まだ食べるのか、華月に惣菜がはいっていた皿を無言でつき出すその男、冬威。


「………吐くわよ」

と溜め息をつきながらもその皿を受け取り惣菜を取りに行く。華月がこうしてなんども往復するため、レジにいる店員は訝しげに華月をじろじろ見るのが、耐えられない。私が食べてるんじゃないのよ、私の連れが食べてるのよ、私はパシられてるのよ。

そう内心華月をじろじろ眺めてくる人々に届かないかと、念じてみながら軽く溜め息をはいた。こんなに短時間で溜め息何回ついただろ、なんて意味のないことを考えながら春巻きや焼きそばなど盛っていく。

「…………ばか」

なんて自分本意なんだ、あの泣き虫は。

だけど、血眼になって探し回っていた最愛の人が、自分の子とを一切覚えておらず、常に忘れ続けてしまうなんて、華月は考えただけで怖かった。

でも、実際の気持ちなんて、当事者じゃなければわからない。

だから、華月は深く傷ついた冬威を慰める方法をわからないでいる。