「冬威さんと華月さんは、その、…恋人、ですか?」

他愛ない話をしていて、唐突に雪夢が興味本意といったふうに、何気無く発した言葉。それに、俺は一人で胸を痛めていた。冷静に対処していたのは華月だった。

「ううん、友達よ」

ね、と俺にふる華月にかろうじてポーカーフェイスを気取り、頷いた。その時の華月の傷ついたような顔にはさすがの俺も気づいていた。

雪夢は残念そうに愛想笑って言う。

「そうなんですか、…でも、仲がいいんですね」

「う、ん…そうか、しらね」

華月が辛そうに顔を歪めながらも笑っていた。

「あ、……あの、どうして、今日はこの病院に?」

「……………雪夢に、会いに来たんだ」

雪夢はその答えに、困ったように眉を寄せ、悲しげに目を伏せた。

「………ごめんなさい、…」

その謝罪の言葉には、きっと雪夢の様々な思いが込められている。

「手帳に名前がなかったから、…きっと私の記憶があったときの、私の友達だったんですよね?」

「………友達…か…」

千秋さんは仕事に戻っていった。仕事を抜け出してきてくれていたみたいだった。でも、朝の、雪夢が目をさます時間には病院にいて、昼前から仕事にいくそうだ。そうしないと、雪夢は、なにも知らない世界に直面することになるのだから。

「雪夢は、……俺の……」

大切な幼馴染みだったんだ。何て言えない。

だから、大切な気持ちを噛み砕いて、笑顔を浮かべて

「友達、だな」

そう、言うしかなかった。