もうずっと泣きっぱなしのあたしの涙腺は完全に崩壊してた。
しゃくり上げるあたしの横で、彼が笑う。
「いつから、そんなに泣き虫になったんだ?」
「ひっ…ふ…煩い。」
文句を言ったのに彼はクスリと微笑して、
「でも、ありがとう。」
と、言う。
“ありがとう”なんて言葉、あたしは久しぶりに聞いた気がした。
「…辛くなかった?」
「僕は、幸せだったよ。あの家で、恵やちづが大きくなっていくのを見ていると、僕まで幸せな気持ちになった。
ちづが生まれた時も本当に嬉しかった。」
懐かしそうにそう言って、打ち上がる花火を眺めてる。
彼は、ばあちゃんのことが好きだったんだ。
ばあちゃんも、彼のことが好きだった。
でも、二人が結ばれることはなかった。
彼とばあちゃんを思うと、あたしまで胸が痛い。
そして同時に、切なさや悲しみが溢れてくる。
彼の瞳には、今も、昔も、これからも、ばあちゃんしか映らない。