拓は中学生になって少し経った頃

家庭教師をつけられた

センターから派遣されてきたのが

黎子だった


そう…拓の初恋  

そして失恋の相手…


7歳も上の黎子だったが

こじんまり整った顔立ちで

そうは見えない


休憩の時に見せる

イタズラっぽい笑顔は

すぐに拓を夢中にさせた


ふざけてばかりいる拓を

時にはキツく叱ってくれる…

頭の良さを感じさせる優しいお説教も

大好きだった



今思えば そんな素敵なおねえさんが

中1のガキなんかを

相手にする事なんか

ある筈ないのに…



無謀にも俺はどうしても

気持ちを伝えたかった


初めは冗談としか受けとらず

はぐらかされてばかりだったが 

俺のあまりに真剣な態度に困惑していた


俺はしつこかった 

黎子さんを困らせた


俺は泣いた 駄々っ子のように


黎子さんも泣いていた… 



そしてワガママな弟のような

俺を抱きしめ 

諭すように


優しくキスをした…



その後、体調の不良を理由に 

この家に来る事はなくなった



出会って半年あまりの事だった



そして 俺の初恋は終った



しょっぱい涙の味だった…