“彼は運命の人ではなかった”


傷心の黎子はそう思う事で

ようやく精神のバランスを保っていた


黎子もまた彼と同じように

自分の夢に向かって勉強を続けた


亡き父と同じ道に進むため

D大学の大学院に入り心理学を専攻した


そこで恭二の姉の塔子に再会した


たびたび顔を合わしていた二人は

その後お互いの家を行き来する様になり

弟の恭二にも再会する事になった


4年前のあのヤンチャ坊主が

見違えるほど逞しく成長して…


恭二に対する思いは拓への気持ちとは

少し違っていた


拓は今でも可愛い弟でしかない


でも恭二は…


黎子は運命に翻弄される自分を

どうする事もできなかった