「真琴の事、大事に思ってるから…」

拓はそう言って私を抱きしめた


私は黙ったまま拓に身を委ねている



その静寂をメールの着信音が破った


「何やねん…おかんやんけ!

ほんま空気読めよ!」


ブツブツ言いながら返信を打っている


「真琴メシどうする?

フレンチの店行こって言うてるけど」


お母さんの生徒さんで

フランス料理のシェフが居るらしい


「おかんはうっといけど

その店中々俺らだけでは行かれへんし

今日はしゃーなしで行っとく!?」


「嬉しい~私おったら邪魔じゃないん?」


「何ゆうてんよ!

おかんは真琴を接待したいんやで!」


私は母に状況を説明して許可を得た


そしてお言葉に甘えて3人で

タクシーでその店に向かった


拓の母はその店では顔が利くらしく

良く躾られたスタッフが挨拶にくる


次々に美味しそうな料理と

それにあわせたワインが出てくる


勿論ワインを飲むのはお母さんだけだが

私たちも少しだけ食前酒を飲んだ


美味しいご馳走と雰囲気の良いお店

優しく素敵なお母さんと

大好きな彼……


食前酒のアルコールも手伝って

この状況を高揚した気分で満喫していた