拓には3歳下の弟がいた


陸と名づけられたその子は

生まれながらに心臓に欠陥があった


一ヶ月検診でそれが解り

その後は入退院の繰り返しで

大きな手術も何度か受けた


初めから生きられても1年という

診断だった


陸は良く頑張った

小さい身体で本当に良く闘った


その頃4歳だった拓には弟の病気の意味が

よくわからず

弟にかかり切りの両親を不思議に思っていた


駄々をこねて困らした事もあった

その時いつも


『お兄ちゃんなんやから我慢して』

と言われていた


拓が小学校2年の時

陸は二回目の大手術を受けた


その時には病気の重大さも解り

両親に我がままを言う事もなく

陸のことも本当に優しくいたわった


まだまだ親に甘えたい年齢でも

拓は気持ちを抑えた


今でもふと寂しげな表情で遠くを見るのは

こんな過去があったから



それから一ヶ月後病状が急変し

そのまま息をひきとった


たった4年の陸の生涯だった