「薫~来たよ!今日は初対面やで~」


病室には沢山の花が生けてある


今でも数多くの見舞い客が

来ていると想像できた


それだけ薫が愛されていた事が解る


拓はそっと薫のベッドに近づき

無言のまま薫の顔を見つめていた


信じられなかった・・・

少し微笑んだような表情の薫の顔


今にも起き上がりそうなのに

もう1年以上も意識がないままなんて



それ以上に目を疑う事があった


拓には幼くして亡くなった弟がいた


生まれながらにして身体が弱く

小学校に上がるのを待たずに

亡くなった弟 『陸』


その陸にそっくりな薫の表情


真琴が拓と薫が何処となく似ていると

感じたのもそのせいだった


拓は今日初めて薫に会ったのに

そんな気がしなかった


陸に似ているという事もあったが

それだけではなかった


眠ったままの姿でも

こんなに人の気持ちを

引き付ける事ってあるのだろうか


陸と薫・・・

この二人が重なる


拓は暫く言葉を失い


そこから動けなかった