暴走少女!~龍の輝き~

青春。

ってなんだろう。


友情。

ってなんだろう。


13歳の夏。

私は戸惑っていた。

人の温かさに。

あまりにもろくて・・・
いつか壊れそうで・・・
一人になりそうで・・・

怖かった。

だから

  青春。友情。

その意味に、

 
     わからないフリをした。



友達と適当に合わせて・・・
適当に笑って・・・
本当の自分が見えなくて・・・
何のために生きるのか・・・

わからなかった。


だから

全国ナンバーワンで・・・
業界の人たちの憧れ・・・

そんな族・・・


『龍輝』

に入った。
けど、この後私に待ちうける運命を誰もが信じられなかった。

姫野結愛(ひめの  ゆあ)、中2の13歳。
お母さんに買い物を頼まれて歩いていた。

その時

   ドンッ!!!

「痛ったぁ。」

運悪く、ヤンキーっぽいヤツらにぶつかった。
「あぁ?なんだてめぇ?」
ふぇっ?
絡まれてる。
けれど残念ながら私にとっては日常茶飯事。
「フッ。超受けるんスけど!当たってきたのはそっちでしょ。」
だから、嫌味ったらしく言ってやった。

「なんだとぉ、てめぇ!俺らに逆らうとはいい度胸だな!?」
久しぶりの喧嘩。
実は私、こう見えて全国ナンバーワンの暴走族、龍輝(りゅうき)の18代目総長なんだよね。

「いい度胸?てめぇらじゃあたしには勝てねぇよ。ここらの族の下っ端だろ?相手にもなんねぇよ。」

本当のことを言っただけ。なのに
「くそ!女だからって手加減しねぇぞ!おりゃー!」バシッ!
くそ弱いなぁ。
左手で止められたわ。
「だから言っただろう?てめぇらじゃあたしには勝てねぇって。」
鼻で笑った。
「てめぇ、何者だよっ!!」
「さぁ?強くなればわかるんじゃねぇの?」
そう言って立ち去ろうとしていた時だった。

ブーンブブブーン!

なんだよ。うっせぇなぁ。
あれ?なんかいっぱい来たわ。多分、こいつらの幹部くらいか?

「おいっ!てめぇら何してるんだ!!」
下っ端たちは幹部らしきヤツらの「どういうことだ?」って声にビビって、答えられてないから私が代わりに言った。

「ちょっとだけ喧嘩してただけだっつぅの。こんなことでわざわざ幹部が出てくんよ。」って。

ん?ちょっと怒ったかも。
「なんだと?てめぇ。」
だってよ。
「それはこっちのセリフだぁ。何処の族だ。」
「俺らは、龍神咲(りゅうかんざき)だ。」

ふぅん。結構有名じゃん。
全国でトップ3に入るくらいかな?
そして、総長らしきヤツが
「てめぇ・・・」
「んだよ・・・。」
沈黙の後・・・
こう言った。

「俺らの族に入らねぇか?」




「ありえねぇから。」

私が龍神咲なんて・・・。

龍輝しか似合わないって。

しかも、

「・・・なんでだよ。」

って言われても・・・。


「ちょっと理由があってな。」
って答えるしかなくなるじゃん。
私のことも考えてよぉ。

それにコイツ、めげずに
「何の理由だ。教えろ。」
だって。


あのぉ、正直言っていいっすか?




しつこい。

てゆーか、なんで私を勧誘するわけ?
意味がわかりませんけど・・・。
お兄さん。
よし。こうなったらぁ、

「う~ん・・・。女の子の事情?ってやつ?」
作戦!!
成功だぜ!!女の内容に男はあまり首突っ込めないからなぁ。


と思いきや・・・

「何の事情だ。だいたいてめぇ、顔と体だけ女であと男じゃねぇか。」
へっ!?

なんだとぉー!?
むむ、むむむむむ?
勧誘しといてそれ?
ふざけてんの?

ん?ちょっと待て。
私、君のこと知らないよ?



いや・・・


知ってた。



関東暴走族連合代表会議で一回会ったことある。



じゃぁ、なんで向こうは私に気づかないの?
全国TOPの族の総長だよ?


 

髪がもっと茶色だったから?
1年前のことだから?


う~ん。

わかんないや。


ん?
ちょっと待て。


代表会議で会ったってことは・・・






こいつが龍神咲の総長ってことかぁ!?




「あんた、龍神咲の総長?」


「ああ。俺は寿木レオ(ことぶき れお)だ。
龍神咲13代目総長だ。」


なるほど。
やっぱりね。私が龍輝って事に気づかないってことは、試す価値アリジャン?


「てめぇ、マジ何者なんだよ。」
「だからただの中学生。」
「じゃあ俺らの族に入れ。んで、全国TOPの族『龍輝』を一緒に倒さねぇか?」


・・・へ?
いま龍輝を倒すって言いました?

確かに龍輝は今一番強くて相手になるような強い族がいない。


だからって仲間を裏切る訳にはいかない。



   でも・・・


対等に戦えるヤツらが欲しい。



       とも思う。


気がつくと勝手に口が動いていた。


「あたしとタイマンして勝てればな。」



って・・・・・・


「はぁ?てめぇ、いくら強ぇからって調子のってんの?俺をなめてたら痛い目みんぞ?」



それはこっちのセリフだよ。
戦うからにはマジだぜ?

勝負に情けは無用。


私はこの言葉が一番好き。

気合いが入るんだ。



   ねぇ・・・。

もしも、瑠維(るい)、あんたが今いたら私の判断どう思う?
バカ?アホ?

どっちでもいいや。
私は自分の道を行くよ・・・。

あんたの言葉通り。







中1の夏。

私は荒れていた。

友達と塾をサボって電車で街中まで行って気の弱そうなヤツらを見かければ、男女関係なくカツアゲする毎日。

楽しかった。

自分の居場所があった・・・。

きっと。





 

その日もいつものごとくカツアゲしていた。

メンバーは8人。

みんな、赤メッシュの髪や金髪。

でも私だけは茶色だった。

理由は特になかった。



でも、なんか様子が違う・・・。

いつもカツアゲするヤツは怯えてる・・・。

なのにコイツは遠くを指さし、笑った。


「なんだよっ!てめぇ!!笑ってんじゃねぇよ。きもいんだよっ!」

全員がそいつを殴りだした時だった。



「こらぁ!!お前たち何してるんだぁっ!!」







警察だった・・・。
「やっべぇっ!!逃げろー!!てめぇ、覚えとけよ!」

無我夢中だった。

逃げないと捕まる!!


と思った矢先・・・



「えっ・・・。」

はさまれた。

完全なはさみうち。

あたりを見回しても警察と私しかいなかった。

他のメンバーは上手く逃げていた。


「・・・あ、あたし・・・捕まるんだぁ。」

と思った瞬間、

「ついてこいっ!」

「きゃぁっ!!」

誰かに手を引っ張られた。


暗いから顔も見えない。

ただ、男ってことはわかった。



気がつくとベッドの上だった。


ゆっくりとあたりを見回す。


柄の悪そうな連中ばっかりだった。

でも一つだけわかったこと。


それは・・・



私を助けてくれたのは世間一般で言う『暴走族』の方たちだということ。



頭は真っ白。



どうしていいのかわかんない。


だからちょっと勇気をだして・・・



「・・・あ、あのぅ・・・。」

精一杯の小さい声で隣で話している人に声をかけた。


「あぁ・・・?  あ、起きたのか。」

「・・・はい。ここはぁ「龍輝の倉庫だ。」


超食い気味に言われた。

「え、えっとぉ・・・。」

「龍輝は日本一の暴走族だ。お前がサツに捕まるのを助けたんだよ。」


へ?

・・・龍輝?

めっちゃ有名ですよ?

このあたりじゃ知らない人はいないっス。

そんな人に助けられるなんて・・・。