私が龍輝に入って4ヶ月が経とうとしていた。
季節は冬。
街はクリスマスムード一色。
正直、クリスマスはあんまり好きじゃなかった。
寒いとか、その程度の理由じゃなかった。
両親が亡くなった日だったから。
もちろん龍輝のヤツらには言ってない。
言うと厄介な事になる。
しかも、交通事故とかで亡くなった訳じゃない。
父は初代龍輝の総長。
母は龍輝のレディースの美虎(びとら)の初代総長。
二人は引退した後も確実に狙われていた。
私にクリスマスプレゼントを買いに行くときもほとんどの族がクリスマス暴走真最中。
だから注意はしていたらしい。
なのに…
なのに…
プルルルル~♪
プルルルル~♪
プルルルル~♪
急に慌ただしく鳴る電話。
なんだろう。
「もしもし、姫野です。」
『結愛ちゃんですか?わたしは喜多宮病院の三吉と申します。』
嫌な予感しかしない・・・
「…はい。」
声が弱々しくなる。
『いいですか?落ちついて聞いてください。』
覚悟はできていた。
狙われてるのはわかってた。
だけどゴクリと息を呑んだ。
『…。お母さんとお父さんが・・・さっき病院に運ばれてきたの。』
「はい…。」
『それでね…、まだ生きてたの。けれど…けれど…』
私が幼いから可哀想だと思ったのか…
最善を尽くしたけどだめだった悔しさなのか…
看護師さんは、切ない声で泣きながら言った。
『…14時56分。お亡くなりに…ヒック…グスン…なられました…。お二人とも…ヒック…同じ時間に…仲が良かったのでしょうね…。結愛ちゃんへの…クリスマスプレゼントを預かってます…。』
放心状態で動けなかった。
死亡理由は…
銃撃
だった・・・・・
ずっと対立してたチームにやられたらしい。
そして、クリスマスプレゼントは
大きな大きな、熊のぬいぐるみだった。
一緒に入っていたメッセージには
『結愛、クリスマス&誕生日おめでとう!!クリスマスに生まれる子なんて滅多にいないわよ。お母さんに感謝してね。笑
それに今までごめんね。お母さんとお父さんがこんなのだから結愛が不良になっちゃった。塾に行ってないのも知ってる。だけどね…不良って優しいのよ?知らないでしょ?だから、どうせ不良になるなら優しい人に出会ってね。言葉で言えないからメッセージにしたんだ。
ごめんね…ダサい母親と父親で…。 12歳の誕生日、本当におめでとう。』
涙はでなかった。
力強い父と母の気持ちが伝わったから。
そんな事があったからクリスマスは好きじゃない。
けれど・・・
こいつ等は
「やったぁぁぁぁぁぁ!!クリスマス~~~~!暴走!暴走!」
彼女とかいねぇのかよ。
寂しい男たちだなぁと思ったのが伝わったのか、彪が
「結愛ちゃん。こいつ等、彼女いないから、もしよかったらクリスマスに走るんだけど一緒に走らない?」
「・・・走る?」
走るの意味がわからなかった私は首を傾け、彪の綺麗な瞳を見つめながら言った。
少し笑った彪はとびきりのスマイルで
「暴走のことだよ。夜とかバイクが走ってる音とか聴こえない?」
あ、なるほど。
「聴こえる。」
「そうそう。あれあれ。実はあれって暴走族がバイクや車で走ってるんだ。」
そうなんだ。
いくら両親が暴走族って言っても私が生まれる前の話だ。
わからない。
「そうなんだ!じゃあ、龍輝もするのぉ?」
「うん。」
なぜか嬉しかった。
でも龍輝は全国TOPの族。
何人くらいなんだろう?
「それって何人くらいが参加するの?」
「う~ん。同盟組んでるチーム全部入れると2000人くらいかなぁ?」
2000人!?
そんなにいるのかよ!!
またもや気持ちが通じたのか
「多いでしょ。でも本当はもっといるよ。多すぎて参加できないだけ。まあ、龍輝だけでも800人いるからね。あとは、レディースの美虎とか一番仲がいい龍星(りゅうせい)とか晴輝(はるき)とか美堂(びどう)とか、まだまだあるよ。」
なんか人の多さに聞いただけでもクラクラする。
だけど
「絶対参加する!」
そう言ってた。