そんなある日、少女を少しずつ狂わせてしまう出来事が起きた。



「ねぇ、私。『イジメ』というものを今日見たの」
「それで、どうしたの?」



少女はとても十三歳の女の子とは思えない笑みを浮かべた。


「十秒ほど目に焼き付けてその場わ去ったわ」
「所謂、」
「見て見ぬフリというやつね」


僕は馬鹿で幼いから、少女の艶めいた笑みに胸を高鳴らせるばかりで、少女の残酷さなど、気付きもしなかった。




「その時知ったわ。人間に平等なんて、無いってね」



もちろん、少女の狂いはじめた音にも。