白く細い階段を上りながら、私は自分でも此が夢だと云う意識を持っていた。否、夢という表現は相応しく無いかも知れない。夢とも現実とも違う世界、確かな概念を持たせない空間があって私は今其処に居るのだ。
コツコツと響く靴音が却って静寂を浮き立たせる。

上り切った先に何があるかも分からないし、そもそも此の階段に限界あるかすら怪しいと云うのに。私には戻る事も止まる事も出来なかった。まるで篝火に焦がれる蛾にでも成ったかの様だ。
馬鹿馬鹿しい、と。心の底から自嘲した。