「いけません」


「は」


「テスト。全然出来てなかったじゃない。遊んでる暇ないでしょう」

「いや、表彰式は遊びじゃないし……」


「まったく、朝早く出ると思ったら、勉強じゃなくて絵を描いてたなんてね。だから反対したのよ、公立受験なんて」

「……でも、怒られるような成績じゃないと思うけど……たしかに少し下がったけど、次は絶対上げるから」


予想外。

あんなに嬉しかった気持ちが全部ぶっ飛んだ。


お母さんが、珍しく成績のことで怒ってる。


「下がった分取り戻して更に上がるには何かを犠牲にしなきゃ成り立たないでしょう。気持ちでなんとかなるなんて甘い考えは捨てなさい」


たしかに、夏休みからずっと文化祭と部活で忙しくて、いつもより友達といる時間も長かったけど……。


テストが全部返却されて、詳しい成績分布表が配られた。


さすがに今どき順位の貼り出しなんかはしないけど、成績分布表で自分が何位にいるかだけはわかる。

いつも学年で一桁以内だったのが、一気に30番台まで下がってた。


「しばらく土日は家で勉強しなさい。次10番以内に戻らなかったら部活やめさせるから」


「ちょっ…」


「表彰式も義務じゃないでしょ。いかなくていい。そのぶん勉強できるじゃない」


だめだ、こうなったお母さんには手がつけられない。