「笠原さん」


さすがにテスト前日からは美術室にこられなくて、やっと全部が終わった今日、絵を完成させにきたら千里先生が待ち構えていた。


「うわっびっくりした!」


だって扉を開けたらすぐ目の前に立ってるんだもん!


「おめでとうございます。入りましたよ、審査員特別賞」

「……は」


「夏休み前のコンテスト。“広がり”が入賞したんですよ」


“広がり”はあの、海の絵のこと。

神林くんが、キレーな青だなってほめてくれた、絵だ。


「えぇえほんとですか!」

「まぁコンテストの規模自体もさほど大きくないし期待してましたけどね、僕は」

「うっそだぁ、受賞なんて初めてですよわたし!」

「だから、いい変化だって言ったでしょう?」


千里先生が嬉しそうに目を細めてくれる。


わたしはあんまり先生と仲良くしたりできないほうだけど、千里先生は特別。


いいかげんなとこが多いけど面倒見はよくて、生徒のことを自分のことみたいに喜んでくれる。


「来週土曜、表彰式がありますよ。出欠は自由らしいですが、せっかくなので行ってみたらどうですか」

「はい!」


嬉しい!

表彰式なんて初めてだよ!