「ん……神林くんはさ、人気者じゃん? なんでもできるし誰とでも仲良くなれるし。たぶん、神林くんのこと好きな子も……多くて」

「うんそれは否定しない」

「あはっ……でね……こんな、わたしなんかに好かれたら迷惑じゃないかな、うざいって思われないかなって」


「槙十がそんなやつじゃないのはわかってるでしょ?」


「……神林くん自身がそう思わなくても、周りの人は、なんで神林くんがわたしと仲良くしてるのか、疑問に思うかも……不快に思うかも。それで、神林くんが何か言われたりしないか……急に怖くなった」


だから、もうやめようと思った。


「だから、神林くんを好きなのを、やめようとしたの。諦めようとした」

「はぁ!? あんたほんと考えすぎだよ!」

「それでも、神林くんが変な風に言われるよりましだと思ったの。わたしが悪く言われても耐えられるけどわたしのせいで神林くんが悪く言われたら耐えられない」


弓美は何を言えばいいのかわからなくなったみたいで、ただ、手を握ってきた。


「でも、無理みたい」

「弥白……」

「わたし神林くんのことが好き」

弓美の手を握り返す。


「この気持ちを消すなんてできなかった。一回好きだと思ったら、もうダメなんだね」

「ふっ……そうだよ、一回好きになったら、なかったことになんかできないんだよ。当たって実るか砕けるか、ずうっと我慢し続けるか、そんなことしかできないんだよ」


「うん、よく、わかった。……わたし、またがんばってみてもいいと思う? 神林くんが相手にしてくれなくても、自分の気持ちに嘘はつけないってわかったから……」

「あたりまえじゃん! 弥白は自分を過小評価しすぎだって!」

「そうかな?」

「そうだよ。わたしは弥白のことずーっと応援してんだからね」


「ありがと」


弓美が、ぎゅーっと抱きついてきたけど、さっきみたいに痛くはなかった。

暑かったけどね。