ああ、神林くんって、こんな顔してたんだっけ。

なんだか久しぶりに、顔を見た気がする。


ずっと、好きになったら迷惑だと思って……忘れようとして、無意識のうちに顔は見ないようにしてたんだ。


ねぇ、でもだんだん、ゆらゆらしてよく見えなくなってきちゃったよ。


これ、何?

涙?

わたし、泣いてるの?


なんかもうダメ、よくわかんない。


「っ……信じてなくなんか、ないっ……でも神林くんは優しいから……みんなに人気だしっ、あたし、ばっか、迷惑、かけてて、なんにも返せないしっ……」

「友達……とかって、そういうのじゃないと思う……損得じゃないよ。少なくとも俺は、そんな風に選んでないよ。それに、迷惑ばっかじゃないじゃん。課題の時も世話んなったし、部活の応援もしてくれたじゃん」

「……話してもっ……ひっ……よかった、の?」

「俺は、話してほしかったな」


無理。

無理だよ、ごめんなさい。

この人を、忘れるなんて、わたしにはできない。


「ごめ、なさ……ありがと……」


そう言ったら、神林くんはわたしの頭に乗せっぱなしの手で、わたしの髪をぐしゃぐしゃにした。


「あと、俺は、誰にでも優しくしてるつもり、ないから」