「笠原」

ぽん、と、神林くんの手が、わたしの頭に乗った。


「間違ってないよ、いんだよ。世の中、そんな強い人間ばっかじゃないと、俺は思うよ」


ぽんぽん、と、軽く、その手が、リズムをとってる。


「争いごと、避けたかったんだよな。笠原は優しいから」


ううん、それは違うの、わたしが臆病なだけなの。


声にならなくて、ただ、首を横に振った。


「いや、優しいよ。でも、やっぱり……俺、怒ってる」

「う……」

「怒ってるし、心配」


「心配?」


「F組の奴らも許せないけど、笠原が、誰にもなんにも言わないでひとりで抱え込んでるのがイヤなんだよ、俺は。別に大げさにしなくても、友達にくらい、話してもよかったんじゃないの?」

「でも、弓美に言ったら、絶対めちゃくちゃ怒るから、話すだけじゃ済まないと思って……」


「……そこに、俺に話すっていう選択肢はないの?」


ずっとぽんぽんしてた神林くんの手が、止まった。


「神林くんに? そんな、わたしのことで悩ませたりしたら、悪いよ」


「なんで笠原いっつもさぁ、わたしなんか、って態度なの? もっと自分大事にしろよ! 俺はヤダよ、笠原がひとりで苦しむのなんか。前に俺が笠原に、俺しか知らない秘密、話したことあっただろ? あのとき俺は、笠原なら大丈夫って思って話したんだ。信じてたから。笠原は、俺のこと信じてくれないの?」


神林くんが、まっすぐ見てくる。

目が、離せない。