「笠原?」
みつかっちゃった。
「おっ、おはよう!」
練習してたのは、神林くんだった。
「早いね」
「神林くん、こそ」
もうだいぶ動いた証拠に、首にタオルを巻いて、額を汗が流れてる。
真っ青なバスパンに白い大きなTシャツ。
いかにもスポーツマンらしい、黒髪短髪の男の子は、茶目っ気のある表情で体育館の入り口に立った。
「キャプテンだからね」
「こないだも、そんなこと言ってたね。すごいね」
「すごかねーよ。キャプテンだから、自主練くらい当たり前ってこと」
流れる汗を腕で払いながら、神林くんがにっと笑う。
「笠原こそ、いつもこんな早く来てんの?」
「あ、い、今、ちょっと忙しくて」
「? 美術部に忙しいとか、あんの?」
「あるよ! 実は、今度コンテストに、出展することになって」
た、たしかに美術部はマイナーだし、実質わたししか活動してないけど、忙しいときくらいあるもん。
わたしがちょっとだけむっとしたのが伝わったのか、神林くんはあわててフォローしてきた。
「わ、ごめん! 俺、美術部あなどってたわ! コンテストとか、すげーな」
「い、いや別に、出すだけなら誰でもできるし……美術部がマイナーなのはほんとだし」
そんなふうに素直に謝られたら、それはそれでこっちがあわてるんですけど!