「なんで、そういうこと言うかなぁ……」
ずるいよ。
なんで、神林くんは、こんなに優しくしてくれるんだろ。
細かいとこまで気付いてくれて、欲しい言葉を言ってくれるんだろ。
「別に恨んでなんかないんだよ」
「うん」
「でも、聞いちゃったんだ。F組の人たち、わたしがE組の垂れ幕ひとりで描いてるの知ってて、わたしが大人しそうだから何も抵抗できないって思ってて、汚したのに謝ってくれなかったの」
「うん」
「みんなが任せてくれたのにどうしようって思って、でも、何か問題があったってわかったら、文化祭に影響が出るかもしれない、参加できなくなる人が出たり、先生たちの規制が厳しくなったら嫌だなって」
「うん」
「だから、言わないことにしただけなんだよ……。ねぇ、わたし、間違ってた?」
悪いこと、水に流そうとしたのは間違いだった?
わたしが悔しいのに耐えられれば、なかったことになるって思ったのは間違いだった?