「俺ちょっと、こいつ落ち着けてくるね。ほら、弓美、いこう。落ち着いたらまた話せばいい」
5分、いや、10分は、繰り返し弓美に説教されてた気がする。
直昭さんが、弓美を連れ出してくれた。
「はぁ……」
思わずため息がでる。
なんでこうなっちゃったんだろ?
わたしは誰も悲しませないために、ひとりで耐えたんじゃなかったの?
悔しいのを飲みこんで、垂れ幕を完成させたんじゃなかったの?
大切な友達泣かせて、何、してるんだろう……ほんと、使えない、ダメな子だぁ。
「笠原」
「ぅわっ」
忘れてた!
神林くんいること……
「笠原、今、俺の存在忘れてただろー」
「あっあははははは……ごめん、なんか変なとこ見せちゃったね」
でもわたしは、なんでか少しもやもやが減った気がしてた。
やっぱり弓美に隠し事なんで無理だったんだ。
それに、弓美がたくさん泣いてくれたから……。
「大丈夫か?」
大丈夫だよ。
「大変だったんだな」
そうだねぇ、垂れ幕直すのは、ちょっと大変だった。
「笠原の垂れ幕、ちょーカッコイイよ。絶対、今年いちばん」