弓美がいなくなると静かになった。
3階の会議室を借りて展示してるんだけど、端っこだからぽつぽつしか人が来ない(美術室は修復不能なカオスなので見せられない)。
アンケートを配るでも記帳してもらうでもなく、ただ何かあったときのため、いたずらされないためにいるだけだから、ハッキリ言って暇。
たまに友達、たまに先生。
あとは保護者っぽい人が多いのと、中学生も来る。
あまりに暇だから落書きしてたら、話しかけてくれた女の子もいた。
「おなかすいたな〜ここで食べてもいいかな〜」
弓美が戻ってくるかと思ったけど来ないなー。
けっきょく、彼氏とラブラブなんだから。
カタン。
鞄から朝買ってきたお昼ごはんを取り出してると足音がした。
「弓美ー?」
振り返ると立ってたのは、よーく知ってる人。
でも、弓美じゃない。
「人が必死で忘れようとしてんのになんで来るかな……」
もちろん彼には聞こえないくらいの小さい声で、でも、つい声に出してしまうくらいの気持ちで、呟いた。
「やっぱりいたー。ちょっと避難さしてっ」
「避難って、ちょ」
勝手に片付けてあった椅子を引っ張り出し、斜め横に座る。
「神林くん、強引ですよー……」
なんて言っても聞いてくれない人だっていうのは知ってる。
「だーって調理室あっっちかったんだもんっ。あーここ天国だわ〜クーラーさいこ〜独り占めすんな〜」