「アドレスきいたんだ!? で、メールもしたんだ!? えらーい弥白!!」

「きゃーっぴょんぴょんしないでっ、ペンキこぼすからぁ」


弓美には、ごまかしちゃった。

こんなに応援してくれてるのに、ほんとのこと言えないよ。


垂れ幕も、ほとんど完成してる時でよかったぁ。


ほんとのこと話したら、弓美はめちゃくちゃに怒って、隣のクラスに殴り込みに行くか、先生に訴えに行くに決まってる。

おおげさじゃなく、それくらい、してくれる。

でも、せっかくの文化祭だし、誰かが参加できなくなったりするような騒ぎにはしたくないんだ。


わたしを大切に思ってくれてるのが伝わってくる、弓美がいてくれれば、それでいい。


「もうすぐ完成だねー、ほんとにひとりで描いちゃうんだもん、すごい!」

「美術部の意地!」


ほんと、意地だけで、なんとかなってる、今のわたし。

こだれけおっきいの描いてると、無心になれるからかえってよかった。


「ん、弥白、ケータイ光ってるよ」

「んー? メールじゃない?」

「でもまだ光ってるよ……電話じゃない?」

「えー、今ペンキで手ぇ離せない、誰からか見てー」

「はいはいー。って!! 槙十からだよ!!」