夏休み前、最後のホームルーム。
担任の先生の話なんて誰も聞いてないね。
弓美はちょいちょい彼氏とメールしてるし。
神林くん、は、また、後ろの席のひとちゃんと話してる。
仲いいな、って思ったら、1年の時、同じクラスだったんだって。
だからこそ神林くんも、ひとちゃんの恋に気付いたんだと思う。
ってわかってても、やっぱり遠いなぁ。
恋って、片思いって、もっとふわふわキラキラしたものじゃないの?
弓美みたく、美人で、サバサバしてて、友達もたくさんいる子だったら。
ひとちゃんみたく、明るくて、テキパキしてて、優しい子だったら。
もっと、自信が持てる?
アドレスもきける?
自分は自分でがんばるしかないのに、つい、そんなことばっか。
「今日はこれで終わり! 9月にまた会おう!」
一斉にみんなが立って、夏休みが始まる。
せめて、挨拶だけは!
「ば、ばいばい!」
わざと神林くんを追い越して、言ってみた。
これが今のわたしにできる精一杯。