帰りの電車は帰宅ラッシュで、冷房がかかってるはずなのに暑い。
弓美と2人、発車待ちの電車の、開いてるドアから入ってすぐのところに立つ。
「あっ、そうだ! 忘れちゃうとやだから、こんなとこでごめんだけど、はい。誕生日おめでとう!!」
そう、実は今日が弓美の誕生日!
こないだから用意してたプレゼント、ちゃんと完成したんだ。
「えっウソありがとー! きゃー! 今日は忙しいからまた今度かと思ってたぁ!」
「そんなわけないじゃんー。今日大活躍だったねーさすが弓美って思った!」
「わーい、開けていい!?」
「って言いながらもう開けてるし」
「あっ写真立て! あっ春休み遊んだ時の写真だ! ……えっこれ、後ろの紙の模様、手描き? もしかして弥白が描いた?」
「あたりー」
「えーすっごい嬉しいありがとう! 今日撮った写真現像したら入れよー」
喜んでもらえたみたい、よかったぁ。
ひとしきり騒いでると発車のアナウンスが鳴った。
慌てて何人かの人がばたばたと階段を駆け下りてくる。
わたしたちの立ってた近くのドアにも、閉まるギリギリのところで人が駆け込んできた。
「セーフ……! あれっ、お前ら」
そのいちばん後ろにいた人がこっちを向いた。
「槙十じゃん、あれ、こっち方向?」
「うん、そう」
わたしたちの知ってる人……神林くんだった。