午前中の授業が終わって、弓美とお昼を食べることにした。
「で、どーなの」
弓美は帰宅部だから昼練はないし、わたしも美術部は個人活動だから、いっつもお昼は二人で食べる。
「へっ、なにが?」
弓美が唐突にきいてきたから、ちょっとむせて答えた。
「槙十」
「神林くん? あっ……またその話? 違うって、言ってるじゃん」
お弁当用の、小さい箸をふって否定する。
弓美はなぜか、わたしと神林くんをくっつけたがる。
「えぇー弥白! 恋しないと、恋! もうすぐ華の17歳だよ 」
「いやうん、まぁ、したいけどね? でも神林くんは……恐れ多すぎるし」
「でも弥白、槙十くらいしか話さないじゃん。せっかくしゃべれる男なのにもったいない」
弓美とは幼なじみだから、わたしが男の子と話すのが苦手なのも知っている。
たぶん、知ったうえで心配してくれてるんだ。
わたしは、誰かを好きになったこともないし、誰かに好きになってもらえたことだって一度もないから……。
「うーん、あれは、しゃべるとゆーか……神林くんが話し好きだから、わたしは答えるだけでいいってゆーか……」
「つまんないのっ」
「そういう弓美はどうなの」
「いや、あたしも今はフリーだけどさ」
弓美は美人で引く手あまたなので、彼氏がいないのは珍しい。
イベントごとも、いつもは彼氏と過ごすから、わたしをひとりにしちゃうのを少し気にしてるんじゃないかな。