でもすぐ、他の人を眺めてる余裕なんてなくなった。
「ラスト一本! 今日は、姿勢を低く保つのだけ意識しよ!」
弓美の大きな声が通る。
実は弓美は、今は帰宅部だけど、中学の時は陸上部だったんだ。
そしてもちろん運動音痴なわたしは、しごかれるほう。
もう、へとへとだよ~。
でも、ラストだからと全身の筋肉に言い聞かせて走った。
わたしと同じような文化部の女の子たちは、やっぱりきつそう。
みんなで走り終わってぜーはーしてると、その横を、全然疲れてない様子で男子が歩いていく。
「おつかれ!」
神林くんをはじめ何人かの男の子は声を掛けてくれた。
「槙十! 玄関まで競争!」
「あっくそフライングだぞ!」
まだ走るのか~。
男の子たちは集団になって、あっという間に玄関の方まで走っていく。
「あいつらほんと元気」
弓美がまた呆れている。
でもわたしは、おつかれって言ってもらえたのが嬉しくて、ちょっと元気になった。
遠くから眺めてた知らない人たちよりは、近くにいるって思っても、いいかな?