「珍しく、明るい絵、描いたんだ……」


自分の描いた絵を自分の目の前でじっとみられるのは、案外恥ずかしい。

だから、つい、遮るようにそんなことを言った。


先生は指導してくれるわけだから別枠って感じだし、今まで美術展とかに出展した時は、自分の作品の前はなんとなく避けて通ってたから……。

人に見られてるって実感持ったの、初めてかもしれない。


「えっ、笠原って暗い絵描くの?」

神林くんがぱっと顔を上げたから、また目があった。

「えっ、意外?」

「いや……俺の勝手なイメージ。そういや、笠原が描いた絵見るのは初めてだった。……ありがと」


神林くんは丁寧に布をかけ直して、棚にしまうところまでしてくれた。


二人で準備室を出ると、もう美術室には誰も残っていなかった。

「うわっやべ、もうこんな時間!? 俺、部活行かなきゃ!」

美術が今日の最後の授業だったから、たぶん他のみんなもさっさと部活に向かってる。

少しの時間も無駄にできない。

そんな風に、みんな何かを急いでる。

「わたし、このままここで部活だから」

「おーそっか、便利だな。んじゃ、またなー」