◇蝶----------ちょう



「夏休み前に一回講義も入れたいんで、彫刻はあと三回の授業で提出してください」


ええー、という声が響く、にぎやかな美術室。

部活の時間と違ってここが騒がしいのは、今が美術の授業中だから。

うちの高校では芸術系の授業を、音楽・美術・書道の中からひとつ必ず選んで履修することになっている。


わたしはもちろん、美術選択。


「どうしても終わらなかったら放課後やりに来てもいいですから」

そう答えながら、千里先生は黒板に、『2EF 彫刻提出7/6』と書いた。


選択授業なので、わたしのいるE組と隣のF組が、一緒に授業を受けている。


「先生! その日は体育祭だと思うんですけど……」

F組の女の子が声をあげた。

「ああ、そうでしたね……困ったな。じゃあ、一応その更に1週間前の授業で提出できる人は提出して。終わらなかった人にだけまた指示を出します」

えぇぇー!?

また、ひときわ大きなみんなの声が響く。


余計なこと言うなよと騒ぐ男の子もいたが、千里先生の成績のつけ方はかなり甘いと思うし。

とりあえず提出すれば何とかなるでしょ。

って思いながらもつい凝っちゃいたくなるとこが、美術部だよね。