「おー、神林、来てたんか」

「小野。もう全然平気~」


「神林くん、大丈夫?」

「槙十―、27日詳細決まったぜー」


槙十の姿を認めたクラスメイトが、ぞろぞろと周りに集まってくる。


「つかさぁ、きいてよ! 風邪ひいたの木曜の夜で、けっこう熱があったから風邪薬飲もうと思ったわけよ。でもみつからなくて、そんときたまたま妹が家にいたから買ってきてって頼んで」

「なんだぁ、またネタかぁ?」

「えー、槙十くん、妹いるんだ」


槙十はすっかりその輪の中心になっている。

わたしはちょこんとその端っこに立ってみる。


「で、水と錠剤と用意して俺の部屋まで持ってきてくれて、なんだこいつ普段は生意気だけど優しいじゃんとか感動したわけよ。そこまでは美しき兄弟愛だったわけよ! でも、実はそれが薬じゃなくて」

「どゆこと?」


楽しそうに話す槙十はもうすっかり元気そうだ。


「プラシーボ効果試してみたかったとか言ってこのやろーって感じでまじもう意味わかんないうちの家!」

「プラシーボ効果って、薬じゃないもの薬と思いこんで飲むと効き目が出るってやつ?」

「そうそうそれ! 薬じゃなくてただのビタミン剤飲まされてたんだよ! でもぜんっぜん効果なかったね。普通に熱ずっと下がらなくて。ひどくねぇ?」

クラスの人たちの笑い声が重なる。


こうして、自然とみんなの中心になっちゃうのが、槙十のすごいところだよね。


「ちょっと弥白、わかってると思うけどあんたの彼氏、人気者だよ。クリスマスくらいカレカノらしいことしないと。というわけで今日の放課後はあたしと瞳とショッピングね」

「ショッピング?」

「クリスマスプレゼント、なんか考えてた?」

「……あ゛」