「体育祭委員決まったら席替えするから、お前らがんばって決めろ!」

千里先生とは正反対の体育会系の担任が、おそらく隣の教室まで聞こえる声で言い放った。

その日のロング。

どのクラスも、7月頭にある体育祭の実行委員を決めることになっていた。


でも、注目すべきは先生の後半の言葉だ。

席替え。

中学ほどはみんな騒がないけれど、やっぱり生徒にとっての席替えは、大きな関心事で。


「席替えかー」

神林くんが小さい声で言ったので、そっちを見る。


「なんか、せっかくしゃべるようになったのにな」

今のは、明らかに、わたしに言ってるよね……?

「ご、ごめんね、最初の頃わたし、緊張してて」

隣の席になってすぐ、神林くんは話しかけてくれたけど、会話が会話らしくキャッチボールできるようになってきたのはつい最近だ。

むしろ、朝、体育館の前で会うようになってからやっと普通に話せるようになってきたかも。

「は、なんで笠原が謝んの。みんな最初は緊張すんだろ。あ、俺はしないんだけど」


廊下側のいちばん後ろ。


席替えは、話したことのない人と隣になることがあるから、元々あんまり好きじゃないけど。

こんなに名残惜しいのは、きっと友達に、なれたから、かな。