好き



その言葉を、弥白は、唐突に、直球に、投げてきた。

だから俺も、真っ直ぐ返した。


けど、もう1週間たつのにいまだに実感が足りてない気がする。


夢みたいに、ふわふわしてる。

夢じゃないってわかってるんだけどさ。



「わー夕焼けが綺麗~」


かなり混んだ車両のドア近くに2人で立つ。

ちょうど鉄橋にさしかかった電車の窓からは濃いオレンジの夕焼けがよく見えた。


「そういや前に、こんな色の絵、描いてたよな?」

「ああ、そんなのも描いたねぇ」

「描いたねぇって、自分の作品だろー」

「あれね、あの1日で仕上げたから、向き合った時間が……。面白かったけど、わたしはやっぱり時間をかけて描く絵が好きかなぁ」

「ふぅん」


絵の話は、俺には詳しくはわからない。


でも、絵の話をしてる時の弥白は特に好きだ。

絵を描いてる時の、髪を結んだ弥白も。


どんどんいろんな表情が出てくる。

もっと、俺に見せてほしい。

見たい。


そんで、俺しか知らない弥白をたくさん知りたい。

今はただ、それだけ。


「夕焼けが綺麗だから、明日も晴れるね」

「そーだな」