全部まわるのにたっぷり2時間はかかって、駅の近くのファーストフード店で休憩してから帰ることにした。


弥白は狭いテーブルの向かいに座って、アップルパイを熱い熱いって言いながら食べてる。


「猫舌?」

「うん……すぐヤケドする」

「でもあったかいほうがうまいんだよな」

「そうなんだよねー」


外は日が傾き始めた。


もう少ししたら帰宅ラッシュが始まる。


来たことなんてなかった場所で、こうして向かい合って、他愛もない会話して。

それだけでなんとなく幸せになるって、すごいことだよな。


「槙十、おーい? 食べないの?」

「あ、また飛んでた」

「なんか今日、ぼーっとしてない? 大丈夫?」


うーん。


「……彼女なんだよなぁ」

「へ?」

「弥白が、俺の。彼女、なんだなぁと思って」

「えぇぇっどしたの、急に、改まってっ」

ほんとに、見てて飽きない。

「かみしめてるの」


自分の中にこれだけの「好き」の力があることに、正直びっくりしてる。