笠原のお母さんは、とても厳しい人らしい。
前期末のテストの成績が悪かったからって(俺より全然いいのに!)好きなはずの部活も我慢して、勉強してるみたいだった。
そのせいか、元気なさげで。
だから久々に美術室にいる笠原を見られて、一緒に帰れて、それだけで嬉しくて……夕飯を一人で食べるって言うから、つい、家に食べに来いよなんて誘ってしまった。
そんなことしなければ。
「あの子、大丈夫かな」
兄貴が車を出してくれて笠原を家まで送り届けると、帰りが遅いはずの笠原のお母さんがなぜか帰ってきていて。
笠原は頬を打たれた。
俺と兄貴も一生懸命謝ったけど、追い返されるようにして……。
「ごめん、兄貴まで謝ってくれて……俺が気ぃ回せなかったから……」
帰ってきて、テレビの前のラグを敷いた床に、なんとなく2人で座る。
「いーよ……うちで育ったらあんなことがあるなんて思わないよな」
「笠原のお母さんが、厳しいってのは知ってたんだ」
「厳しいっていうか、あれは……自分の子供を「管理」したがってる感じだったけど」
綺麗で若くて、細い体型は笠原に似てたけど……雰囲気や顔つきは全く似てなかった。
「お前、あの子のこと好きなんだろ」
兄貴にはバレバレだ。
「ん」
「大変そうだけど、お前が支えてやれよ」
「……嫌われてないかな」
「大丈夫だろ……たぶん」
「たぶんかよっ」
男兄弟はこういうとこがいい。
いつまでもシリアスにならないとこ。