結果として、練習試合当日の朝に会えることになったどころか、アドレスまで交換できた。


あの時、はちみつレモン作ってきてくれたんだよな。

マンガみたいで、ベタすぎてびっくりしたけど、めちゃくちゃ嬉しかった。

しかもこれがおいしいっていう。


だから部員に配って歩いて……一人ずつ話していくきっかけにもして。


試合を前にして話してみて、やっぱりみんなバスケが好きなんだって実感した。


俺がピリピリすればするほどみんながバスケを楽しめなくなる。

そうだよな……俺、頭よくないから思いつめてもいい考えとか浮かばないし。

もっと一人ひとりのこと良く見て、みんなが俺に何を望んでるのか、見失わないようにしよう。

そんなことを考えた。



「槙十ー、早くいこっ」


俺はハッとする。

やばっ、初デートだからって、俺、感傷に浸りすぎだろ。


「おー。っていうか、平日なのにけっこう人いるんだな」

「だね。大学生かな?」

「ぽいよな」

「制服だと目立つね」

「ん」

「でもちょっと楽しい」

「へ?」

「だって制服デートはあと1年半もできないよ? 今のうちにたくさんしなきゃ!」


……うわ、今の……キた。

ずるい。


俺ほんとに、弥白が近くにいてくれたらこの先もいろいろがんばれる気がする。

たくさん、笑っててほしい。


……泣いてるのは見たくない。