翔貴は更に続ける。
「お前、付き合ってからわりとすぐ結婚とか妄想し出すタイプ」
「ん……」
「図星だろ。それが悪いとは言わないけどさ、考え込みすぎないで走ってみんのもアリじゃねぇ? ……俺には、槙十はもうその子のことがちゃんと好きなよーに見えるんだけどな」
「え?」
「毎日その子のこと考えてんだろ。んな顔してるぞ」
そこでガチャンとドアの音がして顧問とコーチが入ってきた。
「あと、キャプテンだからとか難しいこと考えてるなら気にすんな。恋愛は人を強くしてくれるぜ」
翔貴はそれだけ早口で言い切ると、さっさとコーチたちのほうへ歩いていってしまった。
俺も慌てて小走りになる。
と、すみっこで話していた俺たちが気になっていたのか後輩の一人が話しかけてきた。
「何話してたんスか?」
「おー……まぁ、ちょっとお子さまにはまだ早い話」
「なんスか、いっこしか違わないのにガキ扱いしないでくださいよ!」
「ははっそこで怒るのはガキだろー」
だって、嘘みたいに世界が違って見えるんだ。
去年の俺はこんなの知らなかったよ。
恋に憧れるとか彼女ほしーとかまぁ色々したいとかそういう好奇心や冒険心じゃなくて。
あの子だから、会いたいと思う。
会いたいな。