「やべえ! 先生、ここにロマンチストがいます!」

「ヤ・メ・ロっっ」

「えーいいじゃんーつぅか誰よ、相手。話し始めたんだから教えてくれるんだよな?」


「いや……翔貴は知らない……あ、嘘、お前1回会ってるわ。6月くらい? 北高との練習試合前だったかな、朝練で1onしただろ?」

「んー、した、かな?」

「したんだよ。そんとき体育館前を通って、俺が声かけてた子……うちのクラスなんだけど」

「あー……あー、なんとなく? 俺もちょっと挨拶した? よな?」

「そうそう。黒髪の、おとなしめな」


「はいはいはいはい。へぇーなんか、意外」

「いやでもだからっ、まだ好きっていうわけじゃ……ってか」

「それで、“好きってなんだろう?”」

「う゛……まぁ、そう……」


俺は急にいたたまれなくなって壁にもたれかかる。

夜のミーティング前の、つかの間の休憩時間。

だだっ広い部屋だから、元気なやつらは駆け回ってるけど……。


翔貴は妙な間を置いてからおもむろに断言した。


「そんなん人によって違うから、俺には槙十の“好き”はわかんねーよ。ぶっちゃけ俺の“好き”はヤりたいかヤりたくないかだ」

「ぶっ……おっまえ……短絡思考だな!」

「短絡だよ、だって高2男子よ? 華の17歳よ? 普通じゃね? 槙十は根がマジメすぎんだよ」