お互いしか知らないことがあるって、特別な証みたいな気がする。
俺が血が苦手なことも、たぶん、この高校ではほとんど知ってるやついないし。
あの時俺は、美術の課題が遅れてて、放課後、弥白のいる美術室にいった。
正直……正直、あんときなんで彫刻刀で自分の指を削ったかって言えば……
見とれてたんだ、弥白に。
弥白が実際に絵を描いてるところを始めて見た。
いつもと違う。
授業中は姿勢がいいのに、その時は机に向かって背を丸めて、真剣な眼で忙しく手を動かしてた。
そのまっすぐな瞳を。
その魔法みたいな手を、見て。
かっけぇ……!
びっくりした。
楽しそうだけど、すごく真剣なんだ。
そんな顔見たことなかったし。
とか見とれてたら……自分の手もとが狂った。
そんでもってなんと、弥白がそれを手当てしてくれたんだよな。