「昼、何食いたいー?」

「んんーなんでもいいけど! お腹すいちゃった~。あ、あのカフェとかどう?」

「見てみよっか」


美術館の最寄駅で電車を降りて、まず昼飯を食えるところを探す。


心なしか、弥白の距離がいつもより近い……気がする。


高校の情報網というのはおっそろしく早くて、俺と弥白が付き合い出したことは既にあっちこっちに知れ渡ってる。

まあ和久井にバレた時点でクラス中どころか学年全体にバレるとは思ってたけど……。

後から気付いたけど、俺、弥白と付き合うことになったあの時の前に、和久井と話してる中で「弥白」って呼び捨てにしちゃったんだよな。

あの時点で……いや、絶対もっと早く、俺の気持ちわかって楽しんでたんだろーな……。


そんな状況下でイチャイチャできるほど俺も弥白も図太くない。

だから、学校の外で2人の今日は特別。


「槙十? どしたの? 百面相してるよ」

「あっごめ、いやー和久井のいじられたのを思い出してた」

「あははっ、弓美ね、ちょっとさすがに恥ずかしいよね。休み時間ごとにわざわざカップル扱いしてくるんだもん……」

ほんとに、付き合った本人の俺らより、和久井の方がテンションが高いくらいじゃね?

「弥白の友達だろー、なんとかしろよー完全に羞恥プレイだよ」

「んー、でも、あれは弓美なりの愛情表現だと思う……んだよね。うーん、そのうち、飽きると思うよ」


前から思ってたけど、弥白と和久井は正反対のタイプなのに、特別仲が良い不思議なコンビだ。


「そういや、和久井とはいつから友達なん?」

「幼なじみだよー保育園の時から! ずーっと学校一緒なの」

「へぇ、珍しい」


まだまだ弥白について知らないことがたっくさんある。


もっと、知っていきたい、って思う。