弥白と、初めて学校外であった日のこともよく覚えてる。


あの日俺は部活帰りにたまたま小野に会って、体育祭の全員リレーの順番決めを手伝うことになった。



「神林、手伝ってよ」


小野とは去年、体育祭実行委員同士で知り合ってからわりと気が合ってよくしゃべってたし、いっちょ手伝ってやるかって感じで、もう一人の実行委員の園部が待ってる、小野と園部の地元に移動した。

園部は去年クラスが一緒だったからまあまあ喋れるし。


ってーか俺は正直、この2人がどうなってんのか観察すんのが面白いんだよね。


2人は幼なじみらしくて、でも明らかに園部は小野のことが好きでさ。

いや~小野、そういうの、苦手そうだもんな。

とか内心ニヤニヤしながらリレーの順番を話し合って。


したらだいぶ煮詰まってきたとこで、いきなり園部がレジのほうを見て、

「あれ、笠原さんじゃない?」

とか言い出して。


「ん、それっぽい。このへんに住んでんのかな?」

「えー、一人かな? わたし声かけてくる~」


園部が持ち前の社交性で、あれよあれよという間に俺らのテーブルに笠原を巻き込んだ。

どうやらほんとに一人で夕飯食いに来てたらしい。


俺も意外だな、と思ったけど、笠原とあんまり話したことのないはずの小野と園部にはもっと意外に思えたらしくて、質問責め。


あ、笠原、うろたえてる。


……そっか、もしかして笠原って、俺を怖がってたんじゃなくて、人見知りが激しいだけなのか。

そっかそっか、ふーん、へぇー、ほぉー。

なるほどね。



ちょっとした発見だったけど、ちょっと舞い上がるには十分だったんだと思う。