休み時間は恋の話に盛り上がれるけど、その前にやっつけるべき大きな敵がいるんだった。

中間テスト。

あと一週間後には始まる。


ここでまた悪い成績とったら絶対大変なことになる!


弓美が、「告白するなら1回目のデートの帰り!」なんて言うから、どうやって、どこに、いつ誘おうかとかも考えたいんだけどっ、でもっ。

残念ながら恋愛偏差値のひっくーいわたしには、勉強と恋愛をいっぺんに考えられる能力がなくて。

直帰を約束させられたから、万が一のことも考えて授業が終わったらすぐ帰る日々の繰り替えし。

一生懸命頭から恋愛を追い出して、教科書とノートに向かう。


部活もずっと行ってないせいで、頭の中で描きたい絵のイメージがどんどん積みあがっていく。

前回のテスト期間は描きまくってたもんね。


憂鬱な勉強漬けの毎日だけど、ちょっとだけ変わったことがある。


なんとなく、夜になると、槙十とメールをしたり、タイミングが合えば電話をすること。


『えっ、じゃあ見に行ってないの? なんか、もったいなくね』

「そうだねー、他の人の作品は見たかったけど……まぁ美術館とかなら他でも行けるし、いいかなって」

芸術祭が今日から始まっていて、わたしは当初の予定より少ない作品数で参加してる。

あんまり部活に行けてなかったから。


『俺、絵はよくわかんないけど、あれ行ってみたい。近代建築美術館』

「あー、建築、興味あるんだっけ? 面白そうだね」

『ん。前から気になってんだけど美術館とか一人で行くの、なんか気が引けてさー』

「あはは、そんな、緊張することないのに。意外と美術館は平気だよぉ」